広告を掲載した際、どれだけブランド力の向上に貢献しているか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。広告によってどれだけブランド力が向上したか調査する施策にブランドリフトサーベイがあります。
Google広告を始めとしたWeb広告では、分析ツールを用いることでユーザーのクリック数やインプレッション数(広告が表示された回数)、視聴回数などを確認することができます。
しかしながら、これらの指標では、広告を見て検索や購入といったアクションを起こしたユーザーの情報を収集することはできますが、アクションを起こさなかったユーザーに対して広告がどれだけの効果を与えたか把握することが難しいです。
アトリビューション分析と呼ばれるCVが起こる前に接触したすべての広告を評価する方法もありますが、厳密にすべてを評価できるわけではありません。
参考:『アトリビューション分析とは?基本知識やメリット、活用方法を紹介』
例えば、Google広告にはインプレッション課金型と呼ばれる、広告の表示回数に応じて広告費が決定される掲載方式があります。
Google広告ヘルプの説明ではインプレッション課金型はユーザーに対し露出を増やし認知を促すことを目的としているとされています。
参考:『目標に合わせた入札戦略を選択する』
関連記事:『Google広告の自動入札とは?6つの戦略と手動入札との違いを紹介』
広告がふさわしい効果を発揮しているか否かを把握するためには、表示回数がユーザーの認知に対してどの程度影響を与えたかを把握する必要があります。
広告へのクリック数やインプレッション数といったデータで認知に与える影響を計測することは難しいです。なぜなら、認知したものの検索には至らなかった場合や、認知した結果、実店舗に行って購入した場合などはデータを取ることができないからです。
認知を計測する場合は広告を閲覧したユーザーと閲覧していないユーザーに対しアンケートを行い、差を比較することで、広告効果を計測する必要があります。
こういった状況下で効果を発揮する施策がブランドリフトサーベイです。ユーザーにアンケート方式でデータを収集し、広告がブランドに与えた影響を分析することができます。
それでは、ブランドリフトサーベイではどのような方法で広告がブランド力に与える影響を計測するのでしょうか。
また、Google広告では、ブランドリフトサーベイを、YouTubeの動画広告の効果検証をする際に使用することができます。
当記事では、ブランドリフトサーベイとは何なのか、また、Googleの動画広告では、どのようにブランドリフトサーベイを活用することができるのかについて解説します。
関連記事:『YouTube内にディスプレイ広告を出すための8ステップを解説!』
Contents
ブランドリフトサーベイとは
先述した通り、ブランドリフトサーベイではアンケートを用いて調査を行います。この調査では、ユーザーが広告を見る前後でユーザーに対しどのような変化があったのか数値に現れない部分まで把握することができます。
ブランドリフト調査では、広告を見たことのあるグループと、広告を見たことのないグループに同様のアンケートを行い、アンケートの結果を比較することで、広告効果を検証します。
例えば、広告によって認知度を高めたいと考えている場合であれば、「〇〇という商品を知っていますか?」とアンケートをすることで、広告表示によって認知度にどの程度の変化があったのか把握することができます。
またブランドリフトと同列で語られるワードにサーチリフトがあります。
引用:『Google広告』
サーチリフトとは、クリック数やインプレッション数を用いて広告の効果検証をする方法です。例えば、広告のクリック数の日ごとの変化の原因は広告なのか、もしくはそれ以外なのかを仮設立てて検討します。
具体的な数値を用いて検証を行うため、信用できる手法ですが、クリック数やインプレッション数になぜ変化が起こったのかに関しては仮説を立てる必要があり、仮説のままでは、誤りである可能性も否定できません。
そのため、ここで立てた仮説をブランドリフトサーベイで検証することで、より精度の高い広告運用を行えるようになります。
Googleブランド効果測定とは
引用:『Google広告』
Google広告ではブランドリフトサーベイをGoogleブランド効果測定という機能を使うことで行うことができます。
注意点として、Google広告で掲載可能なすべての広告で使用できるわけではないことを把握しておく必要があります。
現在はYouTube広告におけるインストリーム広告とバンパー広告にのみブランド効果測定を行うことができます。
インストリーム広告とバンパー広告双方とも、YouTube動画の再生前、再生中、再生後に挿入される動画広告です。
関連記事:『YouTube広告の広告効果は?注意すべき5つのポイントを解説!』
引用:『動画広告フォーマットの概要』
Googleブランド効果測定では、これらの動画広告の広告効果を無料で測定することができます。
Googleブランド効果測定では以下の7つの集計指標を確認できます。
- 効果があったユーザー数
- 効果があったユーザーあたりの費用
- 絶対的ブランドリフト
- 余力に関するブランド効果測定
- 相対的ブランドリフト
- コントロールグループの肯定的回答の割合
- 広告表示グループの肯定的回答の割合
それでは、それぞれの集計指標では具体的にどのようなことを把握することができるのでしょうか。
効果のあったユーザー数
引用:『Google広告』
Googleブランド効果測定の結果はGoogle広告の管理画面から上のような形で確認することが可能です。
広告を閲覧したユーザーと閲覧していないユーザー間で商品やブランドに対する肯定的な回答にどの程度の差があるか比較検討することができます。
これにより、広告によって商品やブランドに対するイメージをどの程度変化させることができたのか、具体的な人数を把握することができます。
Googleフォームを利用し、アンケートページを作成した場合、設定できる設問数は無制限であるため、いい加減な回答をした場合、矛盾してしまう設問を用意する、もしくは、誰でも正解できるクイズを挿入するなどの手法を用いることで、信頼できるか否かを判断することが可能です。
しかしながら、1人のユーザーに対して1つずつ設問を設定する方式であるGoogleブランド効果測定は、いい加減な回答をしているユーザーと正確に回答しているユーザーを判断することが難しいです。
そのため、データの中にいい加減な回答も含まれてしまうことが現状です。
効果があったユーザー数だけを見て判断することを避け、絶対的ブランド効果や相対的ブランドリフトなど、さまざま指標と組み合わせ、広告効果の検証を行いましょう。
効果があったユーザー当たりの費用
効果があったユーザー数と広告費によって計算することができます。
合計費用を、効果があったユーザーで割ることで算出します。使用した広告費が10,000円、効果があったユーザー数が10人であった場合、
となるため、効果があったユーザー当たりの費用は1,000円となります。
絶対的ブランド効果測定
絶対的ブランド効果測定とは、動画閲覧済みのユーザー数と閲覧前のユーザーの母数が違うことを加味し、割合で比較することで効果を判断する手法です。
効果があったユーザー数がどの程度増加したかを把握することができます。
認知度に関するアンケートで閲覧前のユーザーは40%認知している商品を閲覧後のユーザーが50%認知している場合であれば、10%認知しているユーザー数が増加しているため、絶対的ブランド効果は10%です。
下の表を見てください。
広告 | かかった費用 | 1,000回表示するごとにかかる費用 | 閲覧したユーザー数 | 絶対的ブランド効果 | 効果があったユーザー数 | 効果があったユーザー数当たりの費用 |
広告A | 10,000円 | 200円 | 50,000人 | 10% | 5,000人 | 2円 |
広告B | 10,000円 | 50円 | 200,000人 | 5% | 10,000人 | 1円 |
絶対的ブランド効果では、広告Aのほうが優れていますが、実際に効果があったユーザー数は広告Bのほうが多くまた、コストパフォーマンスも広告Bのほうが優れています。
閲覧したユーザーに影響を与えやすい広告であったとしても、多くのユーザー見ようと思わない広告であれば、全体で見たとき効果の少ない広告になってしまいます。
そのため、絶対的ブランド効果測定に重点を置いた分析を行うのではなく、効果のあったユーザー数や効果があったユーザーあたりの費用に重点を置いた分析を行いましょう。
関連記事:『Web広告の戦略を考えるときに使えるオススメのフレームワーク4選』
余力に関するブランド効果測定
もともと肯定的な意見ではなかったユーザーが広告によって肯定的な意見に変化した割合です。
具体的には、広告閲覧者の認知度が40%、広告を閲覧していないユーザーの認知度が20%の商品がある場合、広告を閲覧しておらず、また、認知していないユーザー数は80%であり、広告によって認知してユーザーの割合は絶対的ブランド効果の20%であるため、
となるため、余力に関するブランド効果は25%となります。
相対的ブランドリフト
広告によって肯定的な回答をしたユーザーの割合がどの程度上昇したかを示す指標です。
広告閲覧者の肯定的な意見の割合が40%、広告を閲覧していないユーザーの肯定的な意見の割合が20%である場合、広告によって20%から40%に増加しており、増加率100%であるため、相対的ブランドリフトは100%となります。
コントロールグループの肯定的な回答の割合
広告を見ていないユーザーがブランドに肯定的な回答をした頻度です。そのため、広告配信前のブランドがユーザーに持たれているイメージを調査することが出来ます。
広告表示グループの肯定的回答の割合
広告を見たユーザーがブランドに肯定的な回答をした頻度です。そのため、広告配信後のブランドが広告を通してユーザーに持たれているイメージを調査することが出来ます。
参考:『Google広告ヘルプ |ブランド効果測定のデータについて理解する』
Googleブランド効果測定の設定方法
Googleブランド効果測定は動画広告の効果を検証するための施策です。そのため、インストリーム広告またはバンパー広告を導入している必要があります。
また、アンケートを取るうえで有用な結果を得る必要があるため、10日間の予算額が一定ラインを超えており、多くのユーザーにリーチできる広告にしておく必要があります。
Google広告では、オークション形式が採用されており、広告の質と広告掲載に使用できる金額を加味し、優位と判断されたものが掲載されます。
そのため、予算額が高い場合、掲載数が多くなる傾向にあり、多くのユーザーにリーチ可能な広告になりやすいです。
日本においては、下記の最小予算額要件を満たしている必要があります。
10日間の最小予算額の要件 | |
1個の質問 | $15,000 USD |
2個の質問 | $30,000 USD |
3個の質問 | $60,000 USD |
金額がドルで設定されているため、為替レートによって最小予算額は変動します。2021年のUSドル/円の為替レートの平均は110円程度であるため、1個質問を設定する場合であれば、10日間の予算額を1,650,000円に設定しておいた場合、Googleブランド効果測定を使用できます。
参考:『USドル/円の為替レートの推移(年次)』
また、Google広告の初期設定では、Googleブランド効果測定を使用することができません。そのため、申請前のGoogle広告管理画面には、ブランド効果測定のバナーが表示されません。
引用:『Google広告』
使用前にGoogle広告アカウント担当者に申請を行い、使用できるようにしておきましょう。以上の設定が完了し、Googleブランド効果測定を使用する場合は以下の手順に沿って行います。
Step.1
Google 広告アカウントにログインします。
Step.2
引用:『Google広告』
ツールアイコン Google 広告 | ツール [アイコン] をクリックし、[ブランド効果測定] を選択します。
Step.3
プラスボタン をクリックします。
Step.4
引用:『Google広告』
キャンペーンで宣伝する商品名またはブランド名を入力します。この際、使用する商品名またはブランド名は、具体的である必要があります。
例えば、「Pixel」ではなく「Google Pixel 4」など商品を特定できる記載尾するように注意しましょう。
同じ商品またはブランドについて複数のブランドリフト調査を実施する予定がある場合は、各アンケートに固有の IDを追加して、商品やブランドを区別できるようにすることをご検討ください。
Step.5
[アンケートの言語] の横のプルダウンメニューをクリックし、アンケートの質問の言語([英語] など)を選択します。アンケートの質問の言語は、キャンペーンに関連付けられている動画広告の言語と一致している必要があります。
複数の言語の動画広告がある場合は、言語ごとに 1つずつ商品またはブランドを作成して、対応する動画広告に関連付けることをおすすめします。
また、アンケート開始日については自動設定されます。
Step.6
[アンケートの質問] でプルダウン メニューをクリックし、広告でユーザーに表示する質問のタイプを指定します。
商品またはブランドタイプ: 具体的な商品またはブランドのタイプを選択します(「自動車 – 商品」など)
最終目的のアクション: 商品またはブランドに対してユーザーに取って欲しい特定の行動を選択します(「購入」など)
引用:『Google広告』
Step.7
アンケートで測定する指標を選択します。上記した最低予算をクリアする必要はありますが、最大3つの指標を選択できます。
引用:『Google広告』
- 広告想起率…「最近動画広告で見たブランドや商品はどれですか」と質問し、広告自体がどの程度想起されるか検証
- 認知度…「聞いたことのあるブランドや商品はどれですか」と質問し、認知度を調査
- 比較検討…「ブランドを利用する場合、次のうちどれを検討しますか」と質問し、購入検討をする余地があるかどうか調査(複数回答)
- 好意度…「この中にあなたが好きだと思うブランドや商品はありますか?」と質問し、好感度を調査(複数回答)
- 購入意向…「次のブランドや商品のうちいずれかを利用する場合、第一候補となるものはどれですか?」と質問し、競争力を調査(単一回答)
Step.8
[アンケートの回答] で、お客様の商品名またはブランド名と、競合他社の商品名またはブランド名(最大3 個)を入力します。
引用:『Google広告』
お客様の商品名またはブランド名を、アンケートの優先回答として使用する必要があります。
Step.9
Google広告では、同一ブランドや同一商品に複数のキャンペーンを設定することができるため、商品またはブランドを宣伝しているすべての動画キャンペーンを選択します。
ブランド効果測定は1つのブランドや商品限定で関連付けられます。同一ジャンルの商品を複数扱っている場合であっても、商品の数だけブランド効果測定を設定する必要があります。
Step.10
プレビューウィンドウでアンケートの質問を確認し、[保存] をクリックします。
以上でGoogleブランド効果測定の設定は完了です。
ブランドリフト調査は、承認されるまでに 48 時間程度かかります。回答の質に問題がある場合や(回答に誤字脱字がある場合など)、回答がGoogle の広告掲載のポリシーに違反している場合は、ブランドリフト調査が拒否されることがあります。
承認された場合は、キャンペーンの運用が始まるとすぐにブランドリフト調査が自動的に開始されます。
引用:『ブランド効果測定を設定する』
まとめ
Googleブランド効果測定は、YouTubeの動画広告の効果測定をする際に有用な施策です。
申請が必要であることから、導入に関しては少し手間がかかりますが、クリック数などサーチリフトでは手が届きづらい部分をブランドリフトを用いることで効果測定を行うことでより精度の高い広告運用を行いましょう。
この記事を読んで、Google広告のGoogleブランド効果測定の導入が難しいと少しでも感じたら、広告代理店に任せるのも一つの手です。
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監修者
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