皆さんは、現在多くの人々がブランドを意識した購買行動を起こしていることをご存知でしょうか。
生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なう株式会社ネオマーケティングが2021年5月31日から6月2日までの3日間、18歳から79歳の男女1,000人を対象に行った「消費者に関する意識と行動」に関する調査によると、商品を購入する際に、「なじみのあるブランドの商品を購入する」ことを意識している割合は65.4%と高く、半数以上のユーザーがブランドを意識した購入を行なっていることがわかりました。
引用:『全国の18歳~79歳の男女1000人に聞いた「生活者意識調査 第一弾」』
このような状況において、企業自体や扱っている商品、サービスのブランディングをすることは非常に重要です。
ブランディングとは、ブランドを形作るためのさまざまな活動を意味します。具体的には、ブランドの認知を促し、そのブランドの強みやポジションを明確化するための活動のことです。
また、ブランディングを目的とした広告のことをブランディング広告といいます。
参考:『意外と知らない?「ブランディング」とは。正しい意味を理解しよう』
ブランディング広告は、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなど、いわゆる「マスメディア」を用いて広告を掲載する「マス広告」を用いて大衆にリーチする中で認知拡大を目指すことが一般的でした。
しかし、現在の広告市場におけるマス広告の割合は減少傾向にあり、2021年に使用された広告費率を見ると、Web広告が初めて、マス広告の広告費を超えました。
引用:『2021年の日本の広告費約6.8兆円 ネットが初のマス超え』
マス広告の勢いが衰えつつある昨今、ブランディング広告として台頭しつつある広告の1つに音声広告(オーディオアド)があります。
上述したマスメディアの1つであるラジオで配信される広告や、Spotifyなど音楽配信サービスで配信される広告など音声のみで情報を伝え訴求する広告全般が音声広告に該当します。
当記事では、音声広告の特徴と音声広告を作成する上での注意点について解説します。
Contents
音声広告とは?
ラジオ広告とデジタル音声広告
音声広告には、リアルタイムで電波に乗せて広告を配信するラジオ広告と、インターネット回線を使用し、音楽配信サービスなどに対し広告を配信するデジタル音声広告の2種類があります。
ラジオ広告の配信先であるラジオの市場規模はピークだった1991年の2,406億円から減少を続け、2018年の調査では市場規模1,278億円と半分程度まで落ち込んでいます。
引用:『ラジオ業界の現状・今後の動向について』
ラジオ広告を始めとしたマス広告衰退の理由の1つに消費者の価値観が多様化したことにより、万人受けを目指すブランディングが支持を集めにくくなったことが挙げられます。
参考:『衰退するマス広告 テレビの「信頼度」は50%を切っている』
マス広告では、不特定多数が見る媒体に対し広告を掲載するため、性別や年齢などユーザーを細かくターゲティングすることができません。
万人受けするブランドが成立しづらい現状において、ニーズのないユーザーに対してもリーチするマス広告は効率の悪い広告媒体になりつつあります。
反面、デジタル音声広告の主な配信先である音楽配信サービスの利用者数は年々増加しています。
音楽配信サービスでは、細かくターゲティングをし、特定のユーザーに対して、広告は配信することが可能です。
今後も音楽配信サービスの需要は増加が予想されており、ICTに関する市場調査を行うICT総研は、2019年末時点で利用者数2,160万人の音楽配信サービスは、2022年末には2,770万人、2023年末には2,930万人に増加すると予想しました。
引用:『2020年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査』
音声コンテンツはZ世代にも普及
特に若者世代での普及が進んでおり、音声プラットフォームVoicyを運営する株式会社Voicyが2021年8月に200人の大学生を対象に行った調査によると、「音声コンテンツをよく聞いている、聞く機会が増えた」と回答した割合は全体の72.5%に上りました。
また、「全く聞かない」と回答した割合が全体の16.0%であることから、大学生のうち84.0%は何らかの形で音声コンテンツを利用していることがわかりました。
引用:『Z世代の7割以上が「音声コンテンツをよく聞いている、聞く機会が増えた」と回答。Voicyと電通、Z世代向けの「声の社内報」トライアルプランを数量限定で提供開始。』
音声コンテンツの普及を背景にデジタル音声広告市場も拡大を続けており、デジタル産業の調査を行うデジタルインファクトの調査によると、2019年時点で市場規模7億円のデジタル音声広告は2025年には市場規模420億円に達すると予測されています。
引用:『国内のデジタル音声広告市場、2025年に420億円』
このように、デジタル音声広告は今後急速な成長が期待されています。
また、音声広告には以下のような特徴があるためブランディングに効果的です。
- 完全再生されやすい
- 他の広告媒体と比較し、好印象を与えやすい
- 目で見ることと比較し、記憶に残りやすい
関連記事:『Z世代にリーチできる施策!TikTok動画広告における3つの成功事例を紹介』
完全再生されやすい
音声広告の多くはスキップ機能が導入されておらず、伝えたい情報を確実に伝えることが可能です。
ラジオ広告はもちろんのこと、音楽配信サービスの中で最もシェア率の高いSpotifyにもスキップ機能が導入されておらず、配信したにも関わらずユーザーがすぐにスキップしてしまうことで、記憶につながらず広告の価値が低下してしまうリスクを抑えることができます。
参考:『Four alternatives to Spotify: swapping is easier than you think』
上の表は、音声広告がある音楽配信サービスやラジオアプリのユーザ−500人を対象に、それぞれのコンテンツの「ながら視聴」の状況に関するアンケートの結果です。
音声メディアは3コンテンツとも「ネット閲覧やSNSをしながら」利用しているユーザーが最も多く、視聴に専念せずに、他のコンテンツと共に視聴されている割合が多いことがわかりました。
Spotifyでは、「ながら視聴」するユーザーが多い点を活用し、ユーザーがSpotifyを画面に表示している場合と、SNSをはじめとした他のコンテンツを表示している場合で、広告の配信方法を変更しています。
具体的には、Spotifyを画面に表示している場合は、曲と曲の間に動画広告を配信します。
また、「ながら視聴」しているユーザーに対しては、音声広告を配信します。ユーザーが画面を見ているかどうかを把握する広告手法で、Spotifyは完全視聴率91.7%を達成しました。
ユーザーの状況を活かした広告配信により、完全視聴率の向上につながります。
他の広告媒体と比較し、好印象を与えやすい
18歳以上の米国の消費者1,000人を対象にAdobeが調査した「ボイスレポート(2019 Voice Report)」によると、スマートスピーカーを使用して音声広告を聞いたことがあるユーザーの多くが音声広告の挿入について「問題ない」と回答しました。
加えて、ユーザーの38%が、音声広告はテレビ、印刷物、オンライン、SNSの広告より押し付けがましくないと回答し、39%のユーザーは音声広告は他のチャネルの広告より興味を引くと回答しました。
引用:『Adobe Digital Insights: 米国における音声広告が、テレビやオンラインなどの広告より人々の興味を引く結果に』
音声広告はユーザーにとって邪魔なものではなく、むしろポジティブな印象を与えていることがわかります。
目で見ることと比較し。記憶に残りやすい
聞くことで覚えやすくなることを示す研究は多く、子どもの教育や成長に関する研究を行う青木多寿子氏と無藤隆氏の執筆した論文である『テレビCMの情動性の高低と認知・行動の関係』でも、耳から得た情報は記憶に残りやすいことを示しています。
広告に関しても同様で、例えば、配信登録制のストリーミングサービスNetflixが、ヒップホップを題材にしたオリジナルドラマ「GET DOWN」のプロモーションにSpotifyのオーディオ広告を活用したところ、広告配信ユーザーのうち89%が広告を認知したと回答しました。
引用:『「Spotifyの広告は、完全視聴が前提であることが強み」:スポティファイジャパン 小林哲男氏』
エンタメ業界のディスプレイ広告の平均が59%であることを加味すると、音声広告が認知に与える影響が優れていることがわかります。
実際にラジオやテレビCMから流れてきたリズムやフレーズを気づいたら暗記していた経験がある方も多いのではないでしょうか。
情報を音声で発信することで、効率よく伝達することが可能です。
以上をまとめると、音声広告は、成熟した市場ではないものの多くのユーザーに対して、伝えたい情報全てを伝達することを可能にします。
そして音声で流すことで記憶に残りやすくなるため、認知度向上やポジティブな印象を持つように促す際に有効であり、ブランディングに効果的です。
実際、2020年にニールセンが行ったニューロサイエンス調査レポートによると、Spotifyオーディオ広告での音声広告接触者は、非接触者に比べて商品ブランドについて好感・興味・利用意向のいずれも40%以上増大したという結果も出ています。
引用:『圧倒的な「先行者利益」と「コスパ」が期待できる 「音声ならでは」の広告効果を科学的に実証 | 東洋経済ONLINE』
音声広告を作成する際のポイント
音声広告を実際に作成する際は以下の2点に注意するようにしましょう。
- ターゲットを明確にする
- シンプルでわかりやすい構成
ターゲットを明確にする
デジタル音声広告では、ターゲットを明確に指定することが可能です。
そのため、広告のアイデアを作成する前のフェーズでターゲットを細かく定めるようにしましょう。
例えば、Spotifyでは以下の表のようにオーディエンスターゲティングを行うことが可能です。
デモグラフィック |
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デバイスと接続方法 |
|
聴取行動 |
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関心予測 |
|
プラットフォーム外活動 |
|
広告への反応履歴 |
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引用:『オーディエンスターゲティングをはじめよう』
細かくターゲティングすることが可能であるため、よりピンポイントにメッセージを届けることを意識し、広告を作成しましょう。
関連記事:『ターゲティング広告とは?6種類と仕組みをわかりやすく解説!』
シンプルでわかりやすい構成
音声広告では、聞き手の記憶に残るような広告を作成する必要があります。
訴求内容を絞り、最小限伝えたい情報のみを盛り込むように心がけましょう。
また、音声広告では、他の広告と違い映像がないため、サウンドロゴやBGMが非常に重要です。
サウンドロゴとは、その音を聞くだけで特定の企業や商品を連想するようなブランディング的な要素を含む、短く再生される音源のことを指します。
実際にサウンドロゴやBGMを作成する際は以下のリンクを参考にしてください。
参考:『魅力的な音声広告を作るためのTIPS – 第2弾 サンプル音声広告で学ぶ』
音声広告の未来
当記事では、デジタル音声広告を中心に解説しましたが、昨今では、対話形式の音声広告である「インタラクティブ音声広告」のテストがさまざまなメディアで行われており、音声広告は現在も進化を続けています。
音楽ストリーミングサービスのPandoraは広告主の質問に対しユーザーが自身の声で回答する「対話的音声広告の広範な公開テスト」を実施しました。
このテストに対するアンケートでは、47%のユーザーが「自分の声で答えるという方式を好きだ」、30%は「好きでも嫌いでもない」と回答し、一般的に歓迎されづらい広告でかなりポジティブな反応を得ることができたそうです。
また、運転中や料理中など手の離せない状況であっても回答できることから、72%のユーザーが「この広告形式が応答しやすい」と回答しており、ユーザーの多くがが対話方式に関してポジティブな反応を示すことがわかりました。
引用:『Pandora launches interactive voice ads into beta testing』
これまでブランディングを目的とし、配信を行うことが多かった音声広告ですが、インタラクティブ音声広告では、広告で配信した情報だけでなく、対話する中で、ユーザーが知りたい情報について詳しく掘り下げることができ、また対話内で購入を完結させることもできるため、音声広告の汎用性が格段に向上します。
まとめ
音声広告は現在市場が拡大中である点、他の広告と比較し好印象を与えやすい点、音で情報を伝えるため、記憶に残りやすい点から、ブランディングをする際に非常に有効な施策です。
現状の認知度や好感度に不満を感じている場合、市場が成熟しきっていない速いタイミングで音声広告の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Spotifyをはじめ多くの音声広告では、再生回数に応じて課金額が決定されるCPM(Cost per Mille)が採用されており、広告を入札したい競合他社が多ければ多いほど、掲載にかかる費用が高くなってしまう傾向にあります。
現在であれば、発展途上の広告市場であるため、成熟ごと比較し、コストパフォーマンスを高められる可能性があります。
インタラクティブ音声広告に関しても商品の購入のために広告を使用したい場合、効果的な施策になる可能性があります。興味がある方は、今後の動向を見守ってみてはいかがでしょうか。
また、当記事を読んで、音声広告は難しいと感じた方や、ブランディングはしたいが本当に音声広告でいいのか不安を感じた方は1度広告代理店に相談してみてはいかがでしょうか。
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監修者
matsuyama2012年創業のWeb広告代理店、株式会社Unionが運営。Webマーケティングの知見を深め、成果に繋がる有用な記事を更新しています。「必要な情報を必要な人へ」をスローガンに、Web広告運用や動画制作など各種Webマーケティングのご相談を受付中。